かつての人の賑わいを生まれ故郷に呼び込みたい
高校生の時にファッションに関心を持ち、18歳で地元呉市を離れ、10年間広島、大阪、ロサンゼルスなど国内外でアパレルの下積みを経て、28歳で地元呉にUターンした下野隆司さん。久しぶりに地元に戻った際、どこか寂しい印象を抱いたという。「僕が学生の頃は今よりももっと、洋服屋が多く、若い人が広島市からでも遊びに来ていました。後継者問題や地域の高齢化により、少しずつ元気がなくなっていると感じました。歴史と文化のある呉市が衰退していく現状をどうにかしたいと思い、かつての賑わいを取り戻すため、アパレル業の枠を越えてイベントを立ち上げました」。イベントの根底にあるのは〝自分たちが楽しいと思えること〟。呉市に人を呼び込む仕掛けとして、「CITYLIGHTS」のあった段原で行っていた大型マルシェイベント「あさまち」イベントを実施。周辺経済の活性化、公共空間の利活用提案を目的としたこのイベントは大成功を収め、多くの人が呉を訪れ、活気の溢れる光景が広がった。

様々な角度から、人が集まる仕掛けを模索する
その後、地域のために自分たちでできることを見つけたいとまちづくり事業を行うNPO法人SYLを発足した。広島近郊の人気パン屋さんのパン屋、パンにまつわるグッズを販売する「パンタスティック」も実施。「パンタスティック」の取り組みは、今では全国の選りすぐりのパン屋が集う、全国展開の大人気イベントとなっている。

アパレルが手がけるうどん屋、新しい事業モデルにしたい
2022年には3年間の香川県での修行を経て、Uターンした職人の兼田章生さんが腕をふるう「うどん 志もの」を開業。讃岐うどんに呉市内の食材を使用したうどんを提供している。「セレクトショップがやっているうどん屋なんてなかなかないと思います。興味と技術のあるスタッフがいてくれたから始められた取り組みです。今後の取り組みとしては、現状ランチだけの提供なので、夜の営業も行っていきたいと思っています。メニューはうどんに限らず、ハンバーガーやカレーなど、自分にはこれがある!というキラーメニューを持っている人に協力していきたい。設備もしっかり整っているので、固定概念に囚われず、一緒におもしろいことをやっていけたらと思っています。また、店名の『志もの』には、僕の名前をベースに、自分たちはもちろん、この店に「志す」「もの=者」が集まる場にすることで、僕たちの街を明るくしたいという想いを込めています。やる気と志しがある人を応援していきたいと思っています」。


フットワークは常に軽く、多様性を尊重していきたい
これまでの広島での「あさまち」などの取り組みが、県外の方にも知ってもらえる機会があり、沖縄県那覇市からの要請で2022年8月〜11月の間にプロジェクトマネージャーを担うこととなった下野さん。「那覇の国際市場が2017年に取り壊しになり、その地区の盛り上げを行うことになりました。新しい場所を訪れると新しい出会いがあり、楽しいアイディアを生み出すきっかけになります。これからも多角的にイベントを展開していく上で、一人で地域の問題や特徴を把握し、イベントを実現していくには限界があるので、現地を実際に見て、体験したものを、自分とは違う新しい角度から昇華する一緒に働いてくれるプロジェクトマネージャーを募集したいと思っています。今の若い世代は、僕らの頃と違って、現場に行って学ばなくてもSNSや動画など、簡単に学べるコンテンツが揃っているので、みんな基本的なスペックが高いですよね。やる気と形作るパワー、そこに遊び心があれば人が集まる仕組み作りを一緒に創っていけると思っています」。雇用という形にこだわらず、フリーでの活動や、リモートでの活動など、その人の持つ技術を柔軟に活かせる場を作っていきたいと語ってくれた。